既存の営農型太陽光発電でパネル積載率を上げて圃場への光遮蔽率が上がっていくと、日射と日影のインターバルがさらに長周期となる。下記は、実験室内での日射の状態をLEDを使い模擬して実験した結果である。
<左側>既存の営農型太陽光発電による間欠日射
<右側>進化型で実現できるであろう常時日射(光量は光遮蔽率を考慮して60%程度にしている)
日射条件
実験結果
従来型と進化型の日射条件として極端な差である可能性があり、すべての既存の営農型太陽光発電がこのような間欠日射条件になっているとは限らない。しかしながら、少なくとも光合成の光飽和に関して、しかもC3、C4など様々な光合成特性をもつ植物があり、これらの種類も鑑みることなく十把一絡に「光飽和があるため、これ以上の光は必要はない」と結論付けることはできない。
陰性、半陰性、陽性、それぞれの作物で栽培の適否があること、大まかには良心的に公開されているとは思うが、営農型太陽光発電の健全な普及のためには、栽培する作物の光合成特性(気孔開閉特性含む)とパネル遮蔽率の関係の定量化を基本に、気候条件を加味しながら、官民挙げてデータベースを構築すべきである。
この光の間欠照射の弊害は、100年近く前の1931年、アメリカ農務省によりすでに公表されている。
出典:https://theconversation.com/micro-naps-for-plants-flicking-the-lights-on-and-off-can-save-energy-without-hurting-indoor-agriculture-harvests-120051
「12hour」とは通常の昼間12時間、夜間12時間を意味する。
「1hour」より右は、通常の昼夜の周期より短い周期で明暗を繰り返すことを意味する。記事では、成長の差の原因として「昼夜サイクルが狂ったと植物が感じたことによる『反乱』」と表現されていた。また、気孔の開閉機構へ影響に関する記述はなかった。記事の趣旨としては「植物工場での省エネの可能性」について主たる目的だったようだ。しかしながら、間欠照射に起因するなんらかの理由による成長阻害の証左としてとらえることができる。
ちなみに、Garner, W.W., Allard, H. Aの論文は現在でも、Google Scholarなどから検索可能である。
ミドリムシ(学名ユーグレナ)は、バイオ燃料の原料となる藻の一種であり、バイオ燃料として使われた場合にCO2を排出するものの、培養時にはCO2を吸収固定することからカーボンニュートラルを実現する材料である。ちとせグループ、ユーグレナ社や本田技研などで研究が進んでいる。本田技研のDREAMOなど、品種の改良で培養スピードと耐久性の向上が研究されているものと思われる。
バイオ燃料としての商用化に成功しているユーグレナ社によれば、まだコストは高いようである。が、今後生産性向上の取り組みも進み、ヨーロッパでは導入は早いのではないかとも思われる。スイスなどヨーロッパ大陸の国では、島国と違って国境を越えた紛争の歴史が長く、自分たちの未来は自分たちで考え決める風土がある。スイスでは、電力料金にかかわらず、自分で電力の種類(原子力/火力、水力、太陽光など再生エネルギー)を選ぶシステムがある。このあたりの背景は、別スレッドで分析を進めていく。
現在世界中で、EVの拡大が叫ばれている。しかしながら、原子力の課題や太陽電池のリサイクル問題と同様、リチウムイオン蓄電池の産業廃棄物としての課題なども中長期的に考えていくと、レシプロエンジンの進化を安易に止めるべきではないと思っている。水素エンジンの開発や、バイオ燃料の進化には大いに期待したい。
アントラボでの藻類の開発は困難であるが、進化型アグリソーラーでミドリムシなど藻類培養工場のエネルギー効率を向上する可能性の検討を進める。
この場合の進化型アグリソーラーは、<ソリューション-2>LED補光、からアプローチし、<ソリューション-1、3>は、ミドリムシなどの光飽和を考察後、工場全体のエネルギー効率の観点で検討を進める。もっとも攪拌により反射板は不要になると思われる。培養工場ではミドリムシなど藻類に均等に光を当てる攪拌装置などが必要と思われ、エネルギー地産地消+工場内DCグリッド化などで効率よく運用できるはずである。
2023年4月8日ミドリムシ培養開始。同梱されていた「ハイポネックス6-10-5」投入により全体が青みがかっている。
まずは、間欠照明光合成実験装置における、弱光常時照射にて初期スタート、増殖後株分けを実施予定。
その後、間欠強光照射で光を増援。
2023/4/29培養中のミドリムシを顕微鏡で観察。
顕微鏡で照射された光でミドリムシも集まってくるようにみえる。
集まってくるのか、新たな細胞が生まれているのか、さだかではない。
(夏休みの理科の宿題並みにおもしろくなってきた)
細胞内の動きのようにみえるが、よく観察してみると上面に浮いているものの動きのようだ。何かがうごめいているのは間違いない。
上面に気泡も頻繁に出るようになった。酸素を吐き出しているようだ・・・
整列した光る点はLED(電源はOFFであるがかすかに点灯している。原因不明。ソリッドステートリレーでオフっているため全波整流回路へなんらかのリークがあるのかもしれない)
以降、USBカメラ(120万画素)で1日に1回撮影し、緑の度合いの変化を観察する。
2023年5月4日のミドリムシのようす
昨日ハイポニカを投入し水も増量したせいか元気そうだ。緑の大きなもの(たぶん死骸?)を背景に線虫のように動いている。(5MB越えはFTPが必要のため録画時間は4-5秒)
彼らが二酸化炭素を吸収しながら光合成をしていくわけであるが、PSII(光化学系II)では、水を分解して酸素とH+(水素イオン)を生成する。H+と電子により、電極やイオン交換膜を適切に配することで電流源としても機能する(光合成燃料電池)。つまり、二酸化炭素削減と発電の一石二鳥となる。ただし商用電力にまでになるには多くの課題が予想されるが、ミドリムシ君に効率よく働いてもらえるようシステムを改善していけば電力密度も二酸化炭素還元効率も改善する可能性がある。最終的にはバイオ燃料にもなり一石三鳥と思えるが、LCA(Life Cycle Assesment)的な評価やコストパフォーマンス、スペースパフォーマンスなど注意深く評価する必要がある。
下記は、PSII溶液抽出によるものでミドリムシ活用のシステムではないが、参考として摂南大学川上教授、松尾教授他発表の論文から図のみの抜粋である。
PSIIとは、光合成プロセスにおける前段階の光化学系IIのことである。
⇒「光合成vs光電効果(作物成長vs太陽光発電)」参照(当HP、やや漫画的な説明。信頼性ある文献は多数存在するのでくわしくはそちらを参照されたい)
2023年5月9日のミドリムシのようす
さらに拡大
(参考)ミドリムシのすじりもじり運動 :: 国立科学博物館 (kahaku.go.jp)
2023年5月12日のミドリムシ
2023年5月13日のミドリムシ
きょうのミドリムシ(2023/5/16)
ミドリムシ成長、自動モニタリング方法と課題
・水面上の二酸化炭素濃度⇒2槽比較、ラズパイでの制御プログラム完、確認予定
・溶存酸素濃度⇒確認予定。ラズパイでのデータ取得が可能か
・カメラによる緑度や透明度計測⇒差分がとれるか文献調査
・分光光度計⇒差分がどうとれるか文献調査
ミドリムシが光合成で吐き出す酸素と思われる気泡
株分けを進める。
成長が確認できれば、水の量など同一条件で2個の株分けを実施し、LED補光有り無しなどの比較実験も進める。
2023年5月19日、新居でのミドリムシ
ミドリムシが生息する溶液をアルマイト処理のない(=伝導性維持)アルミ容器に注ぎ、テスター+αで電極を設定してみた。
水など他の溶液でのORP測定との差は出るか・・・以下は、光合成反応の度合いを計測手段の探索として「見通し」を考えるためのものである。
スチールウールたわしを電極にみたて、アルミ容器と接触しないよう下にジャム瓶のふたをおいた。すると218mVの起電力を得て、数分後96.5mVまで降下した。
ミドリムシ君に選手交代(溶液を入れ替え)同様に電極を設定したが、極性が逆となった。さらにスチルウール無しでテスターのプローブを直接溶液に電極として設定したところ、500mV前後の起電力を得た(下写真左)。テスタのレンジ以下であるがときおり0.1μAが表示される。
(写真左)テスタープローブの電極表面はニッケルかスズメッキと思われるが定かではない。
(写真右)スチールウール電極の場合は極性が反転し、起電力もテスタープローブ電極の場合の半分以下。
正しい電極設定ならびにイオン交換膜の設置でH+を透過させれれば、効率よく電力が得られる可能性がある。今後の検討課題である。しかしながら、動作原理など根拠を明確にしたうえで「ミドリムシ発電!」・・・と言いたいところであるが、電流が取れない以上発電とは言い難い。この電位差は、光合成IIにおいて生成したH+とe-によるものと思われるが、上記、摂南大学川上教授、松尾教授他発表の論文から図のような機構になってはいないため、多くの電流を取り出せないのかもしれない。今後、ミドリムシ培養槽に電極を設置し、電位変化をモニタリングしていく。また交流インピーダンスも計測することで、光の変化や二酸化炭素施用有無での差などを分析していく。
この溶液をスポイドで取り出して観察してみたが、動いているミドリムシの数が若干少なくなり、止まって(死んで?)しまったミドリムシが心なしか多くなったように感じられた。(定性的観察)
2023年5月20日 電極間電位差を測定した容器内のミドリムシ君を確認、元気に泳いでいた。
ミドリムシ溶液を追加、同ミドリムシ培養液を媒質とした電極間電位差
電極に銅線を使用、電位差は680mV(写真左)
わずかながら0.1μAの電流を観測(写真右)ただし何秒かに1回0.1μAが観測される程度である。
5月26日のミドリムシ君@ORP測定容器
営農型太陽光発電・・・なぜわざわざ農地の上に太陽光発電なのか、多くの農業関係者に指摘されてきた。賛成派も多くおられるものの、「作物成長への懸念」と「作物の頭上の無機的な違和感」と言われるケースが多かった。後者のケースは、連立方程式に慣れた技術者が突然、鶴亀算の世界に引き込まれるような、ある種のアレルギーのようなものかもしれない。
-中学の時、連立方程式で数学の面白さに本格的に芽生えた。解析的であり、文化的なにおいによるごまかしがきかないからである。筆者は長らく鶴亀算を習う意味に懐疑的であった。植木算ならわかるが、同時にそこにいるのを見たことがない鶴と亀を数える意味があるのか、と。しかしながら、どう連立方程式を使うかにおいて、小学校で鶴亀算をやっていてよかったのだろうと思う。解を求めるに文化的なにおいを排除することは社会への応用力の劣化を生むのだろう。このことに気が付いたのは社会人になってからである。-
「なぜ農地の上・・」に関しては、様々な背景があり筆者も分析をしてきている。ここでこの話を進めると大脱線となるので、別のページで説明する。
営農型太陽光発電のメリット・デメリットの考察における肝である作物の成長に関して、多くの方々が「様々な作物での圃場での実証実験の蓄積」を呼び掛けている。非常に重要なアプローチであるが、ここでは、「栽培のための光vs太陽光発電」において両者の関係を考えてみたいと思っている。
「光合成には飽和点がありそれ以上の光は不要、だから光をある程度遮ってもいい」のようなインターネット記事が多いが、筆者にはどうも腑に落ちない。「光飽和点」に着眼していることは間違いではないと思うし、うまくいっている営農型太陽光発電は数多くある。しかしながら、作物は陰性から半陰性に限定されており、太陽電池モジュール積載率は20%程度かつ設置高さも高いなど架台の工夫が必要とされている。このままでは作物の種類を増やしたり積載率を上げることができるとは思えない。
「それ以上の光は不要」は、「日射・日影が交互に訪れる環境下であってもトータルの日射量があればいい」と言えるだろうか。あくまで連続日射環境下で「これ以上は不要」と考えるべきではないのか。このことを考察していく。
-厳密には、光飽和曲線はC3植物C4植物でもかわってくるようだ。専門的すぎるし付け焼刃的な紹介は誤解を増殖するのでこのページではふれない。数理モデル含め分析してわかったことから順番に紹介していこうと思う-
論理的説明のために、まずは光合成と太陽光発電における光電効果について比較しながらみていく。
まずは光合成・・・・
この図は小学校から中学校時代に習った光合成のしくみである。
(なつかしい)
第1図 光合成1 出典:https://eco-word.jp/html/02_sinrin/si-01.html
根から水分を吸い上げ葉に送る、気孔経由で二酸化炭素を取り込み太陽光を使って光合成を行う。そして、炭水化物など養分を生成し植物は成長していく。
また、作物として食べるだけではなく、二酸化炭素を取り込んで酸素を生成するので人間が生きていくために重要な役割を担っている。
(ありがたいことです)
この光合成はとても複雑なプロセスであり、詳細説明は専門家にお願いすべきであるが、光電効果と比較をしていく以上、若干、説明責任を果たしておこう。
-正直、光合成を解説することは、言葉が通じない外国で身振り手振りで聞き、あてにならない右脳のみで前に進むというか、へたすれば間違った場所に行くのではないかという不安がある。昔イギリスで、どのバスに乗るべきか人に聞いたとき、A10がアイテーンに聞こえ、いつまでもI10を待っていた経験がある。確か、Aはアイと発音する国がある-
左の図は、光合成の概観図で第1図より難しい言葉と記号が出てくる。
第2図 光合成2 出典:http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/research_highlights/no_59
この図は、第2図の光合成のうち「明反応」を説明する図である。
第3図 光合成における明反応 出典:同上
明反応:光エネルギーを吸収しておこる化学反応
①光エネルギーで水を分解し酸素と水素イオンを生成
電子が放出され、電子伝達物質というタンパク質に受け渡されNADPHに蓄積
②チラコイド膜を隔てた水素イオンの濃度差でATPを合成
NADPH:ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸
これも電子伝達体で酸化力(=電子を奪う力)が強く暗反応で活躍する。
ATP:アデノシン三リン酸
植物体のエネルギーの源になる物質で暗反応で活躍する。
-アデノシン三リン酸は、高校の生物の授業で、AMラジオの「子供電話相談室」に出演されていた岡村はた先生(故人)から教えていただいた。周辺キメラとともに高校時代の生物で覚えている言葉であるー
暗反応:NADPHとATPを使って、二酸化炭素から糖質を生成する。
注)第1図では炭水化物とあるが、この炭水化物から食物繊維を差し引いたものが糖質
複雑なプロセスであることは、これだけでもわかるが、光がどう作用するのか、もう一歩だけ考えてみたい。
植物の光合成における光化学反応である明反応を縦軸に酸化還元電位をおき、説明してきた酸素生成とNADPH生成されたものが左図である。
90度右に倒すとZの字になることから「Zスキーム」と呼ばれている。
酸化還元電位は上の方がマイナスになっているが、上に行けば行くほど電子を保持しやすい。
第4図 Zスキーム 出典:「生命系のための理工学基礎」https://rikei-jouhou.com/
PS-IIとPS-Iは光化学反応系IIと光化学反応系Iである。
PS-II:光で励起された電子は、両者の間にある物質を伝わって、「周辺の物質」を還元しながらPS-Iに至る。
(ここで「周辺の物質」とぼかしているところも非専門家の筆者の限界である。よく説明できないことを知ったかぶりすることは危険なので進歩すれば書くこととしよう)
PS-IIでの電子は、第4図にあるように水を酸化つまり電子を奪って(酸素も生成して)補われる。
PS-Iで生成された電子は、第4図にあるプロセスを経て、NADPHに蓄積される。
(ほんとうに複雑なプロセス、、、、分子生物学は神秘に満ちている。分子生物学者もしくは植物生理工学を専門とされる方の講演を聞いても、なかなか自分の脳に染みわたらないが、脳に光を当てれれば理解が加速するかもしれない)
以上、光合成における光の作用について概略を説明した。
対して、光電効果は筆者は若干の知見があるので、詳しく説明したいところであるが、ここでの主題がぼけるので、簡単にいえと・・・光が半導体の分子構造内にある電子にあたると、電子は喜び勇み自由に動き回ることができ電気が流れる、ということである。
(晴れれば外へ出たくなるのと同じ)
詳しくは、立命館大学の峯元先生のYoutubeチャネルで説明されているので、ぜひ参照されたい。
次の図は、光電効果と光合成の様子を並べて示した図である。
第4図 光電効果と光合成の対比図
光電効果を示す上図左は、バンド理論で示したものである。光電効果も光合成も「光があたり電子が動き回り・・・」のイメージは同じである。光合成の複雑なプロセスは上述したとおりであるが、光電効果も不純物トラップの影響や電子・正孔の再結合プロセスもあるなど理論的な複雑さは同様である。
しかしながら、光合成の方は、電子伝達系でのバケツリレーに加え、電子伝達物質といういわば生命体が関与していることが、大きく異なる点である。また、気孔を通して二酸化炭素を取り込むあるいは酸素を吐き出すため、この気孔の動きも光合成のパフォーマンスに関わる。かかる生命体が機嫌よく活躍してもらうために、温度を適切に保つための気孔開閉もあるようだ。さらには気孔を構成する孔辺細胞は光の強弱と密接に関係しているそうである。これらのような生命体のようなふるまいは光電効果にはなく、相互連携的な動きもないと言っていいだろう。
外からみえるシステムとして考えた場合、下表の比較がここで明記しておきたいことである。
表1 発電(光電効果)と作物(光合成)のシステム比較
発電(光電効果)の方は、入力は基本は光のみであり出力は電力であるが、作物(光合成)の入力は、光・水・空気3つもあり、出力は、乾物重と酸素である。作物の品質も出力の1要素と考え記述している。またシステム技術論でよく論じられる遅れ要素も比較の意味で重要と思われる。
光電効果ももちろん温度などの環境条件でふるまいは変わってくるが、直接の入力ではない。半導体でつくる熱電変換素子は温度差が入力ではある(ゼーベック効果)。光合成の方は、入力が3つもあり、内部要素に相互連携性もあり、また遅れ要素もあることから、作物内の要素を生命体として考えた分析が必要と思われる。つまり、発電と作物の光のシェアリング考える上で、光飽和点を超えた光を太陽光発電にまわせばいい、と単純に考えてはいけない可能性がある。
-ちなみに光合成効率を高めるために孔辺細胞へ影響のある物質(ホルモン?)をみつけ、バイオマス生産力を高める研究もあり、カーボンニューラルな発電への応用なども大学などで検討されている-
両者は、光という共通の入力があっても、出力へのプロセスが異なるのである。
いま一歩解析的なアプローチをしていくために、ここでこの図を示しておきたい。
第5図 光電効果と光合成の特性
上側は光電効果の特性、横軸は光照射量や波長など、縦軸は出力電流などのレスポンスを示す。システムの分析ための1例である。下側は光合成の特性、横軸は光照射量や光波長など、縦軸は光合成スピードなどレスポンスである。
左から3番目まではいわゆる静特性、一番右側には横軸を時間とし入力の光をステップワイズに照射した場合の応答性、つまり動特性である。過渡応答ともいう。
システム工学では伝達関数が使われ、そこから周波数特性や過渡応答特性の求め方を習った方も多いだろう。
光合成の特性で1番左は光飽和点を示した図でインターネット上でよく出てくる。この非線形性ゆえに「これ以上光をあてなくてもいい」との論調が多い。確かに光は不要になる(C3植物、C4植物で違うようである)、もしくは葉焼け防止にも有益、は否定されるべきではない。ただし、営農型太陽光発電下の圃場には、シェアリングにより日射時間と日影時間は交互に訪れるため、問題提起はその時間応答である。第5図右下の???のところは、作物によっても光条件によっても違うだろうと想像できるので断定的な言い方は禁物であるが、時間遅れがある可能性が大なのである。
下図左は、従来の一般的な営農型太陽光発電、同右は、提案する反射板搭載の営農型太陽光発電を示します。
上図右の提案では、
従来の通常の営農型太陽光発電で発生する日影部分に反射光を照射することができます。 このことで、日射・日影のインターバルによる光合成効率の低下を緩和することができます。現状はほとんどの営農型太陽光発電所では、作物への影響を少なくするよう、パネル積載率を下げなるべく高く設置するなど工夫されています。
下記は温室への適用例です。
温室平面積の約50%を太陽光パネルで占有することができるとともに、温室の骨組みを架台として活用できます。
想定する進化型アグリソーラーシステムの導入効果
上の図は、これまで農家さんや農業研究者へのヒヤリングを基に構成しています。
文章にまとめると・・・
具体的には・・・
Youtube
【S9-番外編】進化型アグリソーラーとは – YouTube
立命館大学理工学部 峯元高志教授のYoutubeチャネル「太陽光発電大学」、シーズン-9「営農型太陽光発電の今と未来」の番外編として先生のご厚意により収録されました。
従来型ソーラーシェアリングの「作物生育への影響分析」についてはこちらをご覧ください。
従来型で遮光率を上げた場合(=太陽光パネルの積載率を増やし発電量を増加させる場合)「日射、日影のインターバル」による影響が顕著になる可能性があります。
進化型アグリソーラーシステム制御の概要
太陽光高度に基づき反射板角度を制御しますが、反射板を曲面とすることで反射光をある程度広げることを想定しています。
下図はイメージがわかりやすいようシリンダによる制御の図にしていますが、ロータリーエンコーダーによる回転制御も可能で、業界ではパネルの角度制御に実績があります。
下図はアントラボでの模擬装置の写真です。
反射板制御模擬装置
反射板に垂直に取り付けた傾斜系の値を読み、太陽光高度から圃場への反射光の最適な角度を計算、シリンダを用いて反射板の角度を制御するしくみ。系のノイズなどによるチャタリング防止やシリンダによる連結部の「遊び」を想定して、角度制御の幅はある程度尤度は必要と考えています。
太陽の高度・方位理論計算値、傾斜計電圧(シリンダ制御の結果)をAmbient IoTへアップ中
カーソルをあてるとデータと時刻が表示されます。反射板は太陽がある一定高度になれば制御され始めます。
※Ambient IoTについて
アンビエントデーター株式会社が運営しているIoTサービスです。
信頼性観点では、連結部が少なく強風時に相互に影響を受けないよう各回転軸にロータリーエンコーダを実装する方が安全と思われます。また、ロータリーエンコーダーにより圃場内のエリア毎の個別制御対応とした場合、圃場内の作物の成長度合いに対応した制御も可能となります。
進化型アグリソーラーシステム+環境・成長モニタリング
この進化型アグリソーラーシステムを基盤(プラットフォーム)として、「スマート農業の新たなイノベーション+進化型アグリソーラーシステム」で仲間づくりを進めています。
下図は、太陽光発電モニタリング含む統合プラットフォームです。
作物の成長や品質をモニタリングし、反射板で日照時間を調整することも可能です。
下方の図は、作物のため、のみならず作業者の環境良化やLED活用による防虫防除で農薬使用量を減らす取り組みとの連携も可能と考えています。
参考文献
(クリックでリンク)
⾚⾊LEDによるアザミウマ類 防除マニュアル
黄色LED光源を用いた物理的害虫防除装置の試作-1
黄色LED光源を用いた物理的害虫防除装置の試作-2
紫外光(UV-B)照射を基幹とした施設イチゴ病害虫の新防除体系
KameLabs 水耕栽培ベッド 環境・成長モニタリング
「ラズパイ+DS18B20+Inkbird」で温度計測システムを組み計測中。
温度データはAmbient IoTへアップしています。カーソルをあてるとデータと時刻が表示されます。
成長モニタリングはUSBカメラ撮影を定期実行するとともに、OpenCVを使い緑領域の面積を計算。
左側はUSBカメラでの撮影画像、右側は緑領域の抽出結果。周囲光の影響を受けるなどまだ抽出精度は高いとは言えませんが、少なくとも成長の差分として有効な情報となるか含め検証中です。
また、右側の緑領域/黒領域の比率の計算結果をAmbient IoTへアップしています。
部屋温度の低い時期に、ヒーターで水耕ベッドの温度を調整して、水温と成長の関係、はたまた光照射をパラメータとしてロジスティック方程式への回帰による多変量解析ができればと考えています。
成長モニタリングの屋外での適用を目指し、様々な光環境での計測を実施中です。
※Ambient IoTについて
アンビエントデーター株式会社が運営しているIoTサービスです。